美術・工芸部門[絵画]
蝸牛の引力
鈴木 美月(京都芸術高等学校)
小学生の頃、家の鍵を忘れてしまい、家の前で数時間待っていたことがありました。梅雨の時期で、少し雨が降っていたのを覚えています。そのとき花壇の紫陽花にカタツムリを見つけ、見慣れない独特な皮膚や触覚、波打つような動きに強く惹きつけられました。「この山はどうやって越えるんだろう」「どこへ向かっているんだろう」と夢中で観察していました。
高校生になり美術を学び始め、観察し構造を理解しながら描くことを意識するようになったとき、小さい頃にあれほど見つめていたカタツムリを、今の自分で限界まで描いてみたいと思いました。こだわったところは皮膚の質感です。粘液による潤い、部位ごとの細胞の収縮と弛緩を正確に描くことで、カタツムリ特有の動きが感じられるようにしています。可愛さや嫌悪感など印象を一つに定めず、見る人それぞれの感覚に委ねる曖昧さを残し、昔の私のように魅了されるカタツムリの絵を目指しました。