優秀賞
美術・工芸部門[絵画]
十七
瀧本 早蘭(山梨県立甲府第一高等学校)
「あの夏の日はレモネードで飲みこんで逃げ出したい一日だった。
昨日まで、いやその瞬間まで本気で友達だと思っていたあの子に無視された。
理解できない現状が喉を通らなくって、口の中には血みたいな鉄っぽい苦さと塩辛さが一日中広がっていた。私は放課後泣いていた。五階に続く階段の隅っこで。
あれから、半年がたった。
あの子は今も私を無視してる。
そんな、十七の冬。
朝、いつものように顔を洗う。
冷たい水が顔を射す。
ふと、顔を上げて鏡を見た。
鏡の中の私と、
泣き続けて真っ赤に目を腫らしたあの日の私が重なる。
苦かったあの日を乗り越えて、私はいつしか変わっていた。
レモネードで飲み込んでいたら、成長できなかったはず。」
鏡に映る、今日の十七の私は、周りの環境の激動と自分の目まぐるしい変化を経て、毎日変わる自画像だ。鏡と同じ銀白色のアルミ缶は私の青春であり、私を映す一番近い鏡になってくれるのだ。